シニア犬 傷の手当 と健康

はじめに

愛犬が年齢を重ねて「シニア期」と呼ばれるライフステージに差しかかる頃、飼い主にとって最も大切なのは、心身のちょっとした変化を見逃さず、穏やかで快適な生活を送れるよう支えることです。

若い頃には回復力が早かったちょっとした傷も、シニア犬では思いのほか治りが遅くなったり、合併症のリスクをはらんだりすることがあります。また、心の安定を保つためにも、日々の接し方や環境づくりが一層重要になります。

本記事では、シニア犬の傷の手当、さらには心と体の健康維持に不可欠な4つのポイントに焦点を当て、日常生活で実践できる工夫や配慮を交えてご紹介します。

その中で特に今回は、傷の手当の際にありがちな「消毒薬の使い過ぎによる弊害」についても詳しく解説し、必要な知識をわかりやすくお伝えします。

目次

傷の手当と皮膚ケアのポイント
心のケアと飼い主の関わり方
運動と生活リズムの整え方
食事と免疫力を支える習慣

傷の手当と皮膚ケアのポイント

シニア犬の皮膚は加齢とともに弾力や厚みが失われ、非常にデリケートになります。そのため、わずかな擦り傷やかき傷でも悪化しやすく、感染症の入り口となることがあります。

特に、後ろ足で耳をかいたときにできた小さな出血や、散歩中の茂みですりむいた箇所など、軽い外傷が悪化してしまうケースは決して少なくありません。

こうした傷を見つけたら、まず最初にするべきことは「傷の状態を落ち着いて観察すること」です。

赤みの範囲、出血の有無、腫れ、膿のような分泌物の有無などを確認しましょう。そのうえで、必要に応じて洗浄を行い、優しく清潔なガーゼなどで拭き取ります。

ここで注意したいのが「消毒薬の使い方」です。ヒト用の強い消毒薬(例:オキシドールやイソジンなど)を安易に使ってしまうと、細菌だけでなく傷の治癒に必要な正常な細胞まで傷つけてしまう恐れがあります。

特に頻繁に使用すると、皮膚の再生を妨げてしまい、かえって治りが遅くなることもあります。

もし消毒が必要な場合は、獣医師が勧める動物用の低刺激性の製品を使用し、強くこすらないことが大切です。

実際に、私の知り合いのシニアの柴犬では、飼い主さんが毎日市販の消毒液を使っていたことで傷が悪化し、皮膚が硬くなってしまったケースがありました。

その後、ぬるま湯とガーゼによる優しい洗浄に切り替えたことで、数日後には明らかに傷の治癒が進み始めました。

また、傷口を清潔に保つためにも、爪が伸びすぎていないかチェックすることや、寝床の清潔さを保つことも傷の悪化を防ぐための大切なポイントになります。

小さな傷の早期発見・適切な対応が、感染を防ぎ、愛犬の体にかかる負担を最小限にとどめてくれます。

心のケアと飼い主の関わり方

シニア犬は、体だけでなく心の変化も大きくなる時期です。聴力や視力が徐々に衰えることで不安が増し、「ひとりにされると落ち着かない」「以前よりも甘えてくる」といった行動が増えることがあります。

こうした行動は老化による自然な変化であり、叱るのではなく、犬の気持ちに寄り添う接し方が求められます。

日中、愛犬が安心して過ごせる時間を確保することは非常に大切です。

たとえば、飼い主のそばにベッドを置く、寝ている時に無理に起こさずそっと見守る、穏やかな声で名前を呼びかけるなど、ちょっとした配慮が犬にとっては大きな安心につながります。

また、散歩の時間も「運動」だけでなく「気分転換」や「外部刺激の体験」の機会になります。

匂いをかぐことや、風や音を感じることが脳の活性化にもつながります。

雨の日など外出が難しい時には、室内で知育おもちゃを活用したり、軽いマッサージをしてあげたりするのも良い気分転換になります。

夜鳴きや徘徊といった症状が出てきた場合、それは愛犬からの「助けてほしい」というサインかもしれません。

単なる問題行動として対処せず、「なぜ不安なのか?」を一緒に考えてあげる視点が大切です。

以前、15歳になるゴールデンレトリーバーが夜間ずっと歩き回っていた事例では、夜間の照明と飼い主の短時間の添い寝によって、数日で症状が和らいだことがありました。

心のケアは、薬だけでは叶えられません。愛犬の性格や生活習慣に合わせ、安心できる時間を一緒に過ごすことこそが、最大の心のサポートとなるのです。

運動と生活リズムの整え方

加齢とともに運動能力はどうしても低下していきますが、まったく動かない時間が長くなると、筋力や心肺機能、内臓の働きがさらに低下し、老化が加速する原因となります。

したがって、シニア犬であっても「年齢に合った運動」を継続していくことが、健康維持には不可欠です。

若い頃のような走り回るような運動ではなくても、短時間でも外の空気を吸いながら歩くだけでも十分です。

朝や夕方の気温が落ち着いた時間帯に15~20分程度の散歩を続けることで、体だけでなく精神面にも良い影響があります。

歩行に不安がある場合は、サポートハーネスやペット用カートを使うことで、無理のない範囲での運動が可能になります。

また、滑りにくいフローリングマットやステップを設置することで、室内でも転倒を防ぎながら軽い運動を促すことができます。

生活リズムも、心身のバランスを保つうえで大切です。起床、食事、トイレ、散歩、就寝の時間をなるべく毎日同じにすることで、体内時計が整い、安定した生活を送ることができます。

特にシニア犬では、昼夜逆転の傾向が出てくることもあるため、朝はカーテンを開けて光をしっかり浴びる時間を作り、夜は静かで暗めの環境を整えることが効果的です。

生活リズムを整えながら無理なく体を動かすことが、老化のスピードを緩やかにし、心身の活力を維持することへとつながります。

食事と免疫力を支える習慣

加齢により代謝や消化機能が落ちると、これまでと同じ食事では栄養がうまく吸収されなかったり、体に負担をかけてしまうことがあります。シニア期の食事では、まず「体へのやさしさ」と「必要な栄養素の補給」の両立が求められます。

たとえば、筋肉量維持のためには、消化しやすく良質なたんぱく質が不可欠です。

鶏肉や白身魚、大豆由来のたんぱく質は、シニア犬にも比較的負担が少ないとされています。また、内臓の働きが弱くなっている場合には、肝臓や腎臓の健康に配慮された療法食の導入も検討すべきでしょう。

ビタミンやミネラルも、免疫力の維持に欠かせない栄養素です。
とくに、ビタミンEやCなどの抗酸化作用をもつ成分は、細胞の老化を抑える役割が期待されており、フードやサプリメントで上手に取り入れることで体全体の抵抗力を底上げすることが可能です。

一方で、食が細くなると栄養不足に陥りやすくなります。そんなときには、香りを立てたスープや、食感の異なる食材を少し加えることで、食欲を刺激する工夫をするのがおすすめです。

たとえば、鰹節のだしを少量加えるだけで、がぜん食欲を取り戻す犬もいます。

食事は単なる栄養摂取の手段ではなく、犬にとって「楽しみのひとつ」であるべきです。

ですから、「食べさせなければ」と焦るよりも、「おいしく楽しく食べられるにはどうしたらいいか」という視点で関わることが、結果的に健康を支える近道になるのです。

加えて、水分補給の工夫も見逃せません。水をあまり飲まなくなった場合には、食事にスープ状のものを混ぜる、ウェットフードを使うなどして、自然な形で水分を摂取させることができます。
脱水はシニア犬にとって深刻な問題につながることがあるため、意識的に取り組むようにしましょう。

体調や症状に応じて、動物病院での血液検査などを通じて定期的に栄養バランスを見直し、そのときどきの最適な食事プランを立てることが、愛犬の健康寿命を延ばす基盤となります。

まとめ

シニア犬にとっての「健康」とは、単に病気にかかっていないことではなく、穏やかで快適な毎日を過ごす力を保つことです。

そのためには、傷の手当てや皮膚ケアに注意を払い、心のケアと環境づくりに配慮し、運動や生活リズムを整え、栄養と免疫を支える食習慣を確立することが、いずれも欠かせません。

とりわけ、消毒薬の扱いには十分な理解と注意が必要であり、「よかれと思って使ったもの」が犬の自然治癒力を妨げてしまうこともあります。

だからこそ、日々の変化に目を向け、必要に応じて獣医師と連携しながら、無理のない範囲で愛犬の健康を支えていく姿勢が求められます。

年齢を重ねたからこそ表れる穏やかさや愛しさを、大切に見つめていけるように。

今日できる小さなひと工夫が、明日の笑顔へとつながっていく――そんなふうに、愛犬と共に年を重ねる時間を、心から楽しんでいただけたらと思います。

dpcmf197@yahoo.co.jp について

ターボん について 石堂孝英 公認心理士・臨床心理士 30年以上、人の悩みに寄り添い、カウンセリングなどを通じて、サポートを続けてきた。 また、犬の世話をして常に心の友として、長期間暮らす。犬の心を始め、さまざまなことを研究、研鑽をしている。
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